顧客のFacebook登録率は95%。そして、Facebookを使う目的は、顧客をつなぎ止める最適なツールだっただけ。
北九州市の伝説のかくうちスタイルのバー、かくうちうえだ。店主の上田奈美さん。今回、三部作のラストは、Facebookをやるよりも重要な、顧客作りについて。
なお、第一部と二部未読の方は、そちらを先にお読みください。
本章の構成はこちらの通りです
- 顧客を選び、顧客に選ばれる
- お客様同士をつなぐ
- キーマンを捉える
- お客様のことを覚える
- できるだけ顔を出す
- Facebookで特別イベントはしない
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コミュニティリーダーであること
-
Facebookよりも大切なこと
顧客を選び、顧客に選ばれる
「うちの客層は、小倉のどの高級店よりも良い」
これはかくうちうえだのママ、上田奈美さんの言葉。
確かに、客単価3000円を超すことは、めったにない大衆店価格なのに、私が飲んでいた時だけでも、来ていたお客さんは、大きな不動産デベロッパーの偉い人や、医師、小倉の街の顔役な人や、政治家など、夜の街でも高級店にいるのが自然な方が多かった。
つまり、これは偶然ではありません。かくうちうえだは、そういった人たちから選ばれていると同時に、上田さんも、お客さんを選んでいるということ。
「お客様をつなぎ留めることが最重要」
前回にも書いた上田さんの言葉ですが、当然、お客さんが来れば誰でもいいわけではありません。かくうちうえだという場を、楽しんでくれると共に、いい空気にしてくれるような、上質なお客さんで構成されるからこそ、そのお客さんも、他のお客さんも、かくうちうえだの常連でいてくれるのです。
どれだけFacebookを頑張ったとしても、店まで足を運ぶ価値がなければ、顧客は再来店してくれません。かくうちうえだのような業態は、何よりも居心地のいい「店の空気」が必要。その為には、良いお客様ほど再来店してもらう為に、より力を入れるべきなのです。
お客様同士をつなぐ
かくうちうえだには、様々な面白いお客様が来店し、会話を楽しんでいます。そんな、自然の流れの中で、ママの上田さんは持ち前の明るい話術で、お客様同士をつなぎ、会話を盛り上げ、お客様同士が自然に友達となります。
さらに、facebookがありますから、お店が終わった後も、Facebook上でお客様どうしがつながって、交流を深めます。そして、また、かくうちうえだで再会すれば、さらにお客様同士は盛り上がって、親交を深めます。
こうした、新しい縁を、何気にコーディネートしているのが、上田さんの役割。当然、無闇に誰でもつないでいるわけではなく、お客様の属性や性格からの相性は、どうかなのか。また、そのお客様同士でつながることが、ご本人のプラスになるか。そこまで深く考えた上で、表向きは、軽妙洒脱な雰囲気で、お客様をつなぎます。
かくうちうえだは、ただ楽しいだけで終わる場ではなく、足を運ぶことにより、新しいプラスになる出会いを提供してくれる場である。だからこそ、良質な客層が集まってくるのです。
キーマンを捉える
店舗型のビジネスだと、その顧客が常連さんになってもらうことで、直接のお店への売り上げの寄与はもちろん、いろいろな人を連れて来てくれる、顔の広いキーマンとなる人がいます。当然、キーマンの心を捉えて逃さないことは、とても重要です。
かくうちうえだは、バースタイルなので、上田さんは、お客さまとの会話から、その人がキーマンであるかを的確に判断し、そのキーマンをつなぎ留める、最大の努力をします。その中で、直接の交流ができるFacebookは効果を発揮しています。
なお、この顧客を見分ける視点は、とても大切です。実際、Facebookでけた違いの成功を収めているビジネス人は、殆どが的確に顧客を見分けた上で、大切なお客様に対して、しっかりとアプローチを行っています。
やろうと思えば、誰とでも際限なく交流ができるFacebookですが、時間は有限かつ貴重なもの。Facebookをやる時間も、大切なお客様から優先に投資すべきです。
お客様のことを覚える
これも、かくうちうえだで飲んでいて見掛けた風景。上田さんは、お店の中と、Facebook上でのお客さまとの会話をしっかりと覚えていて、久しぶりに来店したお客さまに、そのお客様自身の話題を振って、よく覚えていますね、と、そのお客さまが驚いていました。
Facebookで交流が容易になったとはいえ、客商売では、単なる社交辞令な交流はマイナスの場合があります。
例えば、Facebookで、いいね!をいつもしてくれて、たまにコメントをしてくれるのに、実際にお店で店長と会話してみたら、実はまったく覚えられていなかったら、顧客は下記のように思います。
「自分とは、売上の為に表面だけで付き合っているんだ」
しかし、上田さんのように、Facebookでふと書いたことも含めて、自分に関心を持って話をしてくれたら、そんな事まで、きちんと覚えているのだと、小さく感動さえ覚えます。そして、ここが大切です。
かくうちうえだのような、特定少数の客層を相手にすることが、利益に直結する商売であれば、お客様のことを覚えられる範囲で、ソーシャルメディアも範囲を絞って、交流を重ねることが大切といえるでしょう。
リアルでも足を運んで顔を出す
上田さんは、お店に入るのは夕方からです。お店に生えるまでの間は、Facebookでお客さんとの交流もしていますが、きちんとやっていることは、お客様が経営しているお店や、お客様が出展しているイベントに、できるだけ顔を出すことです。
Facebookだけで済ませず、実際に足を運び、顔を出すことが、顧客の信頼を勝ち取るためにとても重要だということは、ソーシャルメディア時代になっても変わらない事実です。
合わせて、その先々で Facebookに写真画像投稿することで、お客様の宣伝になり、更に上田さんの場合は、facebookでそれを見た友達の反応もあるので、ますます、そのお客様は上田さんのファンになってしまいます。
特にFacebookでイベントをしない
これだけ、Facebookをフル活用しているように見える上田さん、実はFacebookだけの貸し切りのイベントなどはしません。それどころか、自分でFacebookのイベントを作ることもありません。
何度も書きますが、上田さんにとって、Facebookの使用目的は、既存顧客をつなぎ止める交流ツール。よって、その目的を達成することが重要であり、お店としてFacebookの特別なイベントをやることは目的外のことなので、やる必要もない。
ツールの使用目的を明確にして、そこからブレずに使う。単純ですが、とても大切なことです。
しかし、その一方で、お客様同士で盛り上がって、勝手に旅行などのイベントが立ち上がり、それがFacebookで進められることはあるのです。
つまり、飛び道具的なFacebookイベントに頼るのではなく、上田さんは、かくうちうえだが良い空気であることを徹底的に追求することで、顧客同士が盛り上がりイベントも自然発生する、優れた場(コミュニティ)を醸成しています。
コミュニティリーダーであること
ソーシャルメディア時代のコミュニティリーダーとは、中途半端なリーダーシップを発揮して、人から反感を得て、信頼を失うことではありません。
自分が徹底して、つなぎ役となり、コミュニティの人間関係を強固にして、魅力あるコミュニティーを構築することで、自然と人を惹きつける。
人と人の繋がりが増えていく、ソーシャル時代のコミュニティリーダーに必要なのは、リーダーシップよりもリレーションシップ。その点において、上田さんは、優れたコミュニティリーダーなのです。
Facebookよりも大切なこと
三部作として書いてきましたが、あなたが、かくうちうえだの事例をビジネスに活かしたいなら、Facebookのテクニックよりも、もっと大切な下記であることに気づいた筈です。
- かくうちうえだの経営テーマは「徹底して顧客をつなぎとめる」
- 接客・気遣い・場繋ぎまで、顧客が再来店したくなる場作りに全力をあげる
- Facebookの目的は、顧客を繋ぎ止めるための交流ツールでしかない
しっかりとした、かくうちうえだの本質の「顧客作り」という目的の上に、ちょこんとFacebookが乗っているだけなのです。
この記事をご覧の方には、接客業の方も多いと思います。もし、あなたが売上をあげたいのであれば、小手先のFacebookよりも先に、自分のお店の「顧客作り」を徹底して見直すべきです。
次に、その顧客作りに、どのツールが適合するかを考えて、使用するツールの目的を定めることです。
沢山あるツールの一つにしか過ぎない、Facebookが効果を生むか否かは、全ては根本の目的の時点で決まっていることを、かくうちうえだの大成功が証明したと言えるのではないでしょうか。
今回のまとめ Facebookの目的を明確に。それ以前に、顧客作りを明確に。