ドラクエから考える、社長が企業経営をクリアできない5つの理由


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クリアできるドラクエ。クリアできない経営

 世の社長の皆さんは、子供の頃、「ドラクエ」こと、ドラゴンクエストをやった人も多いかと思います。大抵の人はラスボスを倒して、ゲームをクリアされていますよね。子供でもゲームとしてクリアできるのが、ドラクエです。

 その一方で、企業経営はドラクエのように、簡単にクリアできません。それどころか、経済環境が厳しく、会社に「つうこんのいちげき」を食らって、瀕死の企業も多いかもしれません。

 なぜドラクエは簡単にクリアできるのに、経営は簡単にクリアできないのでしょうか?と問えば、

「所詮、ドラクエはゲームだから」

 と一言で片付けられそうですが、実は、ドラクエの簡単にクリアできる要因を考えると、経営をクリアするヒントがみつかります。

  1. 自社も顧客も見える化する
  2. 社長の願望と熱意で道を切り開く
  3. ゴールと、途中の目的・目標の道筋を立てる
  4. 事業のリスク管理をして、果敢に挑む
  5. 何を、誰に、どこで、どうやって。正しい経営戦略を実行

 ドラクエから導き出した、上の5つの理由について解説します。

 私がFacebookなどのソーシャルメディアとリアルで交流している経営者に、経営戦略の大切さを、分り易く伝えたいと思い書きました。
長文ですが、会社・社員・家族を幸せにしたい、社長さんは是非、お読みください。

1.見えているドラクエ、見えない経営

 「スライムがあらわれた!」となっても、殆どのプレイヤーは慌てることはありません。なぜなら、スライムのヒットポイントは8程度で攻撃力も弱い。こちらがレベル1でも十分に倒せるモンスターであることが、分かっているからです。

 ドラクエでは1・2戦もすれば、モンスターのHP、攻撃力・防御力や、使う特技や魔法。更には海系のモンスターは、イオナズン系に弱いなど、弱点も推し量れます。

 そして、自分のHP・マジックポイント(MP)、装備・使える呪文なども、きっちりと数字で見えているので、勝ち目のある敵とは戦って勝利して、経験値とゴールドを得る。逆に、分が悪い敵は、早々に「にげる」を選択できます。

 しかし、多くの企業経営では、相対する顧客が何を求めており、企業がどんな「かいしんのいちげき」を繰り出せば、お客様からゴールドをいただけるのか、見えません。

 それどころか、自分のステータスが戦士なのか魔法使いなのか、自社の強みすら正確に把握できていない場合も多々あります。戦士なのにメラを唱えようとしていたり、魔法使いなのに木の棒で直接攻撃をして、有効な攻撃ができず、戦いに勝てないからゴールドが得られない。

 更には、資金力や人的資源力などの、HP・MPが見えないまま戦い続ければ、社長が率いる会社というパーティーは全滅します。

 ドラクエのように経営をクリアするためには、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」の孫子の兵法の通り、マーケティングで顧客や市場を知ると共に、SWOT分析などの、自社の分析を正確に行っていく。

 自分も顧客も、できるだけ全てを「見える化」させることが大切です。

2.クリア前提のドラクエ、クリアさせない経営

 ドラクエは、子供たちがクリアして貰わないとクソゲーになってしまい、売上になりません。当然、如何に適度な難易度で、誰でもクリアできるように収めるのが、エニックス(今はスクエニ)さんの腕の見せ所です。

 しかし、経営は真逆。クリアが出来ないのではなく、競合企業が足を引っ張って、クリアをさせてくれませんが、これは当然です。ビジネスとは、商圏の売上規模が決まっている内での、企業同士の顧客の奪い合いの「競争」です。
 時には意図的に競合企業から妨害を受ける場合がありますし、直接の妨害を受けなくても、自分の商圏に強い競合企業が現れれば、自社のゴールドは、瞬く間に減っていきます。

 ドラクエのようにクリアをさせてくれないのが経営。ならば、どんな邪魔が入ったとしても、経営者が心を折らずに、自分の強い願望熱意で、経営のクリアのできる道筋を、切り開くしか無いのです。

3.筋道があるドラクエ、筋道のない経営

 ドラクエは、ストーリーの流れや場所の移動。課題を達成するためのラーの鏡ロトの紋章の配置など、ゲームをクリアするための道筋がきちんとあって、それに沿えばクリアができます。

 ドラクエ1なら「竜王を倒す」に至るまで、どの町を通っていき、それぞれに出される課題をクリアしつつ、適切なモンスターと戦ってステータスと装備を整えて、きちんとステップアップしていって、竜王を倒してゴールです。

 しかし、経営は道筋のお膳立てがないので、そのままではクリアが出来ません。ドラクエの観点から、経営をクリアをするならば、社長が事業の道筋をきちんと立てる必要があります。

 つまり、自分が達成したい大きな人生のゴールを設定して、企業として、それに至るまでのステップを刻むべき、目的・目標を段階ごとに設定するべきです。

 また、ドラクエでは、道筋を進めるため、町の長老や王様からの助言があります。今は、企業経営においても、ネットや書籍、セミナー・研修などなど、道筋を指し示す助言は、実は沢山あります。
 あとは自分が心から納得できる助言を受けたら、ドラクエと同じく、その助言を実践することです。

 ドラクエのように、きちんと道筋を立て、それを一歩づつ歩んでいくことで、経営もクリアしていきましょう。

4.死んでも良いドラクエ、死ねない経営

 「おお、ましりとよ、しんでしまうとはなにごとだ!」ってな感じで、ドラクエでは死んでも、大したペナルティを受けることなく復活できます。よって、多少の無理を押し通して、ゲームを進めることだってできます。

 例えば、こんな感じで、たったのレベル13で、ドラクエ2のラスボスのシドーを倒すという無茶に挑めるのも、死んでも平気だからです。

『追記』ここにYouTube動画を貼っていたのですが、動画が削除されました(汗)

 ドラクエでは死んでもペナルティがないが故に、積極的に挑むことで、その立ちはだかる課題を達成できます。

 しかし、日本の場合、経営で死ぬと大変。倒産させれば、ブラックリストに乗って融資は受けられません。倒産して、周りから罵声は浴びせられても、なかなか支援をしてくれる人は現れないのも現実です。
 つまり、死ねないが故に、挑むことができないので、課題が達成されないという側面を持ちます。

 当然、経営が死ぬことは避けるべきです。しかし、ドラクエから考えれば、きちんと挑む方法はあります。

 ドラクエでは死んでもペナルティがないが故に、積極的に挑める。つまり、死んでも(失敗)しても、ペナルティが少ない範囲に収めることです。

 これはリスク管理の考え方。ビジネスにチャレンジする際、それが失敗した場合、最大限で失うものは何かを冷静に分析。仮に失敗しても、会社が死なない範囲に収まり、尚且つ、成功した場合に得られるリターンが大きいならば、積極的に挑むべきです。

 但し、もう一つ重要なのは、ドラクエで中ボスを倒しに出掛けたが、途中で回復系のアイテムが不足して、到底倒すのが難しい場合、ルーラキメラの翼で町に戻って、さっさと体制を立て直しますよね。

 明らかに、チャレンジが失敗に終わることが見えた場合は即撤退して、再度、作戦を練り直す。この「即時撤退」の考え方も重要。

 ドラクエのように経営をクリアするためには、死なない程度にリスク管理を行なった上で、きちんと計画をもって挑みましょう。

5.戦略通りのドラクエ、戦略不足の経営

 前章でドラクエは死んでも平気と書きましたが、思い返してみると、パーティーが全滅した回数は、実はそれほど多くないと思います。(プレイヤーの性格にもよりますが…)

 戦闘ではHPやMPが見えていますから、適切にベホマなどで回復はしますし、ダンジョンや塔に入る前には、HP・MPの回復系のアイテムを用意しますから、そうそう全滅はしません。
 同時に、プレイヤーは、自分が倒せるモンスターが出現する「戦える場所」を選ぶので、速攻で全滅させられるような事態は、更にありません。

 ちなみに、「誰と、どこで、どうやって、戦うのか」を立案することを戦略といいます。
 ドラクエの場合、パーティーのレベルに合わせて、きちんとモンスターと戦える、戦略に合致した場所へ、プレイヤーが意識せず、辿り着くように出来ています。

 しかし、経営では、そんな親切あふれる状況は絶対にありません。経営の場合、

何を、誰に、どこで、どうやって、売るのか

を決めることになりますが、それは経営者が決定します。この戦略を間違えれば、親切なドラクエと違って、逃げることも出来ずに瞬殺されることだってあります。

  • 自社が持っている武器(商品・サービス)の強みは何か?
  • 進みたい市場の顧客には、自社の武器が通じるのか?
  • 進みたい市場の競合企業と戦って、勝ち目があるのか?

 

私の師匠の竹田陽一先生のランチェスター戦略でいう所の「商品地域客層戦略」で正しい戦場を選択して、「営業顧客維持戦略」で成果を挙げる戦い方(売り方)を考える。
 
ドラクエのように正しい戦略に導いて貰えないなら、自分で正しい経営戦略を導き出して、経営をクリアすることが必要です。

竜王を倒す勇者でなくていい

 最後に一点、ドラクエと経営の重要な違いを述べると、経営では、竜王を倒す勇者である必要は無い、ということです。

 世の中には、スティーブ・ジョブズや本田宗一郎など、竜王を倒して世に名を馳せたかのような、キラ星のような勇者たる経営者たちが存在します。
 しかし、自分の目指すゴールが、ドラクエに出てくる、小国の優しい王様であったり、町の長老であっても、全く構わないのです。

 経営者とは世界を救う勇者ではなく、自分の道を求道すると同時に、大切な家族・お客様・社員を守る一家の長です。

 ぜひ、経営初心者の方は、経営や戦略を学び・実践して成果を出し、小さな勇者たる「地域の盟主」として、自分の町を守り育てて頂きたいと、切に願う次第です。

今回のまとめ
ドラクエの如く、当然に経営もクリアしよう

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