執筆・アプリ開発:株式会社はちえん。代表取締役 坂田誠
毎日、目の前の仕事で手いっぱい。売上はあるのに、生活費を引くとほとんど残らない。新しい収入の柱を作りたくても、何から考えればよいか分からない――。そんな零細企業・自営業の方に向けて開発したのが、ChatGPTのプラグイン「戦略軍師はちえん。さんDX」です。
今の仕事、得意なこと、使える時間と予算を伝えると、AIとの会話を通じて、事業案の比較、採算の試算、実行に使う資料の制作を順に進められます。企画書の書き方から調べ始める負担を減らし、「まず何を試すか」を具体的にするための道具です。
今回は、名古屋の架空の個人経営美容室「おしゃれサロンHachi」を設定し、新規事業の制作を最後まで行いました。どのように考え、何を作ったのかを、実際に制作した資料とともに紹介します。
この記事は制作ケーススタディです。Hachi、店主、顧客数、収支は架空の設定です。掲載する利益は条件を置いた計画値で、実際に営業して儲かった事例ではありません。人物・店舗のイラストもAI生成イメージです。
忙しい事業者が、会話から新規事業を形にできる
このプラグインでは、AIが必要な情報を段階的に聞き、経営者が内容を確認しながら進めます。難しい指示文を最初から完成させる負担を減らし、今の商売を材料に考えられるように設計しています。大きな特徴は、次の3つです。
- 自分の強みと制約から考える。既存のお客様、経験、設備を生かし、使える時間、先に出せるお金、守りたい生活費まで整理します。
- 違う4案を、利益と負担で比べる。市場・競合を調べ、楽観・標準・悲観の見通しを作ります。材料費に加え、集客費、準備時間、置き換わる既存の仕事の利益も計算します。
- 選んだ案を、実行用の資料まで作る。事業計画、運営手順、申込条件、Excel管理表、説明画像、案内ページの仕様へつなげます。「明日、何を説明して、何を記録するか」まで具体化します。
調査結果や比較案を見て先へ進むか、どの案を選ぶか、提供条件をどうするかは、経営者が判断します。忙しい人にとってのメリットは、考える順番と資料作成の手間をAIに助けてもらい、お客様の反応を確かめる準備に取りかかりやすくなることです。
今回の作例はCodex環境で制作しました。OpenAIのプラグインの考え方は公式の案内で確認できます。このプラグインの利用環境や設定方法は、弊社の研修でご案内します。
ケーススタディ:名古屋の1人美容室「Hachi」を設定
まず、技術と常連のお客様はいるものの、働く時間に対して手元に残るお金が少ない店を設定しました。
| 項目 | 架空の設定 |
|---|---|
| 店舗・店主 | 名古屋市千種区の住宅地。48歳の女性店主1人で経営。美容師歴25年、独立8年。 |
| 主なお客様 | 近隣の40〜60代女性。白髪と、自宅での髪の整え方が気になる方。 |
| 現状の仕事量 | 月88回来店、平均単価6,600円(税込)。月220時間働く設定。 |
| 手元に残りにくい理由 | 店の月間営業利益は218,000円。店主の生活費として200,000円を引き出すと、18,000円しか余裕がない設定。個人の税金等を払う前の数字。 |
| 新事業の目標 | 半年後に、既存営業と比べた月間利益を10万円以上増やす。準備・集客の時間も費用として評価する。 |
生活費の引き出しは、ここでは店の経費と分けています。店の収支には黒字があっても、暮らしと事業の余裕が小さい。Hachiは、そうした「忙しいのに儲からない」状態を考えるためのサンプルです。
1.強みと市場を整理し、方向の違う4案を作った
店主の強みを、白髪への施術経験、お客様との関係、髪質を見ながら説明できること、と整理しました。市場調査では、カラーのちから千種宮根台店のようなカラー専門店や、Anyの公式メニューなど、実在する競合・代替の一次情報も参照しています。
そこから考えたのが、「店で髪を整えること」と「翌朝、自分で整えられること」をつなぐ価値です。ただし、調査で近隣のお客様の支払い意思が分かったわけではありません。価格を示した有料の試行で確かめる課題として残しました。
比較した4案はこちらです。価格はすべて、今回作った架空の提供案です。
| 案 | 提供するもの | 計画上の価格(税込) | 比較のポイント |
|---|---|---|---|
| A | 朝ラク髪の90日伴走 | 1回14,300円 | 施術と自宅練習を組み合わせ、既存の施術枠を活用する。 |
| B | 自宅セット個別レッスン | 45分6,600円 | 単発で試しやすいが、利益を積み上げるには件数が必要。 |
| C | ホームケア選定便 | 1セット7,700円 | 既製品の選定と使い方の案内。仕入れと価格比較が課題。 |
| D | 地域企業の身だしなみ研修 | 1回・5人まで55,000円 | 法人への販路を作る。営業・準備の負担も比べる。 |
各案について、良い点、弱い点、3つの採算シナリオ、募集を止める条件を1枚の画像にまとめました。画像を押すと大きく表示できます。




この作例では、架空の店主がA案を選ぶ想定で、その後の制作へ進めました。現在の技術と施術枠を使いやすく、半年の利益目標に近づく条件を組み立てられるためです。ほかの案も、Hachiの時間・件数の上限を置いて比較しました。
2.選んだA案を、価格・内容・時間まで決めた
事業名は「Hachi 朝ラク髪の90日伴走」。カット、根元の白髪カラー、毛髪ケアに、自分の髪でセットする練習を組み合わせる案です。

料金は1回14,300円(税込)。3回来店した場合の合計は42,900円ですが、各回の施術後に支払い、次の来店は任意という条件にしました。前払い、回数の消化義務、自動更新はありません。
1回の施術・練習は110分。来店後のフォローは1回、10分以内で、返信は翌営業日まで。合計120分を1回分として見込み、フォローを無制限に増やさない設計です。全体カラーの大幅な変更や縮毛矯正などは、この料金の対象に含めません。
「お客様に何が届くか」と「店主が何分使うか」を一緒に決める。ここまでそろえると、案内文、採算表、運営手順の内容を一致させやすくなります。
3.売上に加えて、本当に増える利益を計算した
Hachiでは、新メニューの1回を入れると、従来の120分の施術枠を1回置き換えます。新メニューの売上だけを足すと、利益を多く見積もってしまいます。
税抜の売上13,000円から材料費2,300円と、その枠で得られたはずの旧メニューの利益5,000円を引くと、利益が増えるもとは1回5,700円。さらに、初期制作費、集客費、準備・販促に使う追加時間を差し引きました。追加時間は1時間2,000円で評価しています。
| 見る数字 | 標準計画の試算 |
|---|---|
| 最初の90日の提供回数 | 第1期8回、第2期12回、第3期16回。各期30日、合計36回。 |
| 初回のお客様 | 18人を計画。既存客14人、新規客4人。36人の新規獲得という意味ではない。 |
| 90日累計の増分経済利益 | 66,200円。初期制作費・準備時間・販促費・販促時間を控除した計画値。 |
| 90日の最後の30日の増分経済利益 | 68,200円。1か月分の販促費15,000円と追加4時間分8,000円を控除。 |
| 半年後の目標が成り立つ条件 | 月24回提供できれば113,800円。ただし、集客・継続・費用が想定どおりの場合。 |

標準計画には、再来を判定できる14人のうち12人が再来する仮説も入っています。まだ実際のお客様で確かめていません。また、月24回提供しても、販促費が1万円、販促時間が2時間増えると、増分経済利益は99,800円となり、月10万円の目標を下回ります。
新メニューは既存の枠を使いますが、販促の追加4時間は必要です。通常の運営時間を月220時間から224時間として見込むなど、忙しさも数字で確認しました。売れるか、続けてもらえるか、時間内に提供できるかは、有料試行で検証します。
あわせて、対象の既存客20人に価格を示して提案したうえで、開始30日時点の有料初回客が3人未満なら、新規募集を止める基準を作りました。Hachiの設定では先行持出の上限を15万円、損失見込みによる停止基準を12万円とし、毎週確認します。これは新事業の試行管理用の数字で、プラグインや研修の料金ではありません。
4.WordとExcelで、実行に使う資料を制作した
選んだ案から、編集できるWord文書3本とExcelブック2本を制作しました。Word文書はPDF版も用意しています。ここでは全文を掲載せず、どのような役割の資料か分かる部分を抜粋します。
事業企画書:何を、誰に、どう売るか
先ほどの採算表は、事業企画書の一部です。対象のお客様、提供内容、集客の順番、費用、停止条件をまとめました。店主が方針を振り返り、協力者に説明するための文書です。
運営手順書:相談から記録まで、順番を決める
「お問い合わせが来たら何を確認するか」「料金をどう説明するか」「予約後に何を記録するか」を、店主の作業として並べました。下の抜粋には、料金、取消条件、安全確認、任意同意、予約記録の流れが入っています。

施術の安全確認は、実店舗で使う製品の指示などに合わせて確認する必要があります。今回の手順も、実施前に店主が確認して使うサンプルとして制作しています。
利用申込書兼提供条件:説明と取り交わしをそろえる
料金だけでなく、提供範囲、各回の支払時期、次回来店が任意であること、取消条件などを文書にしました。案内ページと口頭説明で条件が食い違うのを防ぐためです。

正式な店舗情報や必要事項は未入力です。実際に取り交わす前に、自店の情報と提供条件を確認・記入する前提になっています。
事業計画管理Excel:計画と実績を並べる
管理用のExcelは11シートで構成しました。前提、収支、営業活動、顧客、進捗などをつなぎ、楽観・標準・悲観のケースを切り替えて確認できます。顧客の記録欄は30人分。人数と来店回数を分けて記録する設計です。

このサンプルの実績欄は未入力です。計画66,200円を、そのまま実績の利益として表示しないようにしました。店主は入力した結果を見て、続けるか、改善するか、募集を止めるかを判断できます。
都度請求・領収Excel:必要な情報がそろってから発行
もう1本のExcelには、入力、請求書、領収書の3シートを用意しました。1回14,300円の請求に対応し、宛名などの必要情報が未入力なら「発行保留」と表示します。領収書も、支払いの確認を前提にしています。

計算、描画、保存後の再確認を行いました。ただし、利用者の実際のExcel環境での再計算・印刷は未確認です。税の扱いや発行者情報も、自店の条件を確認してから使う必要があります。
5.説明画像、話す原稿、案内ページの見本まで作った
人に説明するために、選んだ事業の説明画像4枚と、約2分を想定した説明原稿も制作しました。相手の悩み、サービスの内容、料金と条件、試行の進め方を順に伝える構成です。
さらに、Webのサービス案内ページ(LP)の仕様と、PC・スマホ向けのデザイン画像、HTMLの見本を用意しました。下の画像はPC版のデザイン見本です。

Hachiのページは公開していません。予約を受け付けるサイトとして動作確認したものでもありません。ここで制作したのは、公開前に内容を検討し、制作を進めるための見本と仕様です。
価格、任意来店、都度払いなど、同じ条件を企画書・申込条件・説明画像・ページの仕様に反映しました。資料が増えても、事業の内容が一つにつながることを重視しています。
使い始めるときは、今の仕事と目標を伝える
最初に伝える内容は、身近な情報で大丈夫です。例えば、次のような相談から始められます。
1人で美容室を経営しています。月220時間働いていて、生活費を引くと余裕が少ないです。半年後に月10万円以上の利益を増やしたいので、今のお客様と技術を生かして、小さく試せる新規事業を一緒に考えてください。
これはHachi用に作った入力例です。自店で使うときは、自分の売上、費用、使える時間、目標に置き換えてください。分からない数字は、分からないと伝え、確認するところから進めます。
- 現状と目標を伝える。仕事、顧客、強み、時間、お金について、AIの質問に答える。
- 調査と4案を読む。調査から先へ進むかを確認し、利益と負担を見て試したい案を選ぶ。
- 条件を確認する。対象、価格、範囲、時間、説明資料を見て、文書制作へ進むか判断する。
- 資料を使って、小さく試す。実店舗の条件を確認したうえで、価格を示して提案し、反応と採算を記録する。
AIとの会話で準備を進めやすくし、経営者は自店に合うかを確認する。新規事業のアイデアがまだない方も、今の仕事を出発点にできます。今回完成したHachiは、その一連の準備を示すサンプルです。
執筆・アプリ開発:坂田誠
株式会社はちえん。代表取締役。中小企業・小規模事業者に向け、Web・SNS・生成AIの活用を経営判断と現場の業務につなげる講演・研修・コンサルティングを行っています。坂田誠のプロフィール・講演案内。
資料・出典の確認日:2026年10月6日。掲載画像は原寸を維持してWebPへ軽量化し、Word・Excelの抜粋は文字を変えない可逆圧縮を使用しました。
配布と使い方の研修は、公式LINEでご案内します
「戦略軍師はちえん。さんDX」は、株式会社はちえん。のAI研修で配布し、使い方も研修する予定です。自分の商売を題材に、相談の始め方、案の選び方、数字と資料の確認方法を学べるよう準備を進めています。
忙しくても、新しい収入の柱づくりに一歩踏み出したい方は、公式LINEアカウントで今後の研修予定をチェックしてください。日程や参加条件は、正式な案内でお知らせします。
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