セミナー講師報告
2026年6月8日(月)、TKC中部会岐阜支部の研修会にて、株式会社はちえん。代表取締役 坂田誠が、岐阜県の税理士の先生方を対象にAI活用セミナーを行いました。
当日は約40名の税理士の先生方にご参加いただき、「AIがどこまでできるか」「AIを活用した顧問先の拡大」「会計事務所向けのAI活用事例」をテーマに、税理士業務における生成AIの実務活用と、これからの会計事務所の価値の変化について解説しました。
開催概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催日 | 2026年6月8日(月) |
| 時間 | 14:00〜16:00 |
| 会場 | TKC岐阜SCGサービスセンター研修室 |
| 対象 | 岐阜県の税理士の先生方 |
| 参加者 | 約40名 |
| 講師 | 坂田 誠(株式会社はちえん。代表取締役) |
| 主なテーマ | AIがどこまでできるか、AIを活用した顧問先の拡大、会計事務所向けAI活用事例 |
テーマは「もう記帳代行では生き残れない」
今回のセミナーでは、税理士業界におけるAI活用を、単なる便利ツールの紹介としてではなく、会計事務所の将来像に関わる経営テーマとしてお伝えしました。
講演の中心メッセージは、
「AIで空いた時間を、何に変えるか」
です。
証憑処理、仕訳候補の作成、月次コメントの下書き、決算説明資料の作成など、これまで人が時間をかけていた作業領域には、すでにAIが入り始めています。
一方で、AIに任せられる作業が増えるほど、税理士に求められる価値は「作業量」から「判断・対話・意思決定支援」へ移っていきます。
当日お伝えした主な内容
1. AIは税理士業務の中心に入り始めている
生成AIは、メール作成や文章要約だけにとどまりません。
現在は、証憑読取、仕訳候補の作成、異常値の検知、月次コメント、決算説明資料の下書きなど、会計事務所の日常業務に近い領域へ広がっています。
講演では、AIの進化を以下の3段階で整理しました。
- 第1段階:補助型AI
メール、要約、議事録などを支援するAI - 第2段階:業務支援型AI
証憑読取、仕訳候補、調査補助などを支援するAI - 第3段階:AIエージェント型
資料回収、月次処理、レポート作成など、業務フローそのものを支援するAI
今後は、AIを「文章を書く道具」として見るのではなく、業務を進める担当者として活用する視点が重要になります。
2. AI作成・人間レビューが実務の基本形になる
セミナーでは、紙・PDF・明細などからAIが取引日、取引先、金額、消費税区分、摘要、勘定科目候補、仕訳候補を整理する流れを紹介しました。
ただし、AIにすべてを任せきるわけではありません。
税区分の確認、例外処理の判断、継続取引との照合など、専門家として確認すべき部分は人間が担います。
これからの実務では、
AIが下書きを作り、人間が確認・判断する
という形が基本になっていくと考えられます。
3. 月次試算表から、社長に聞くべき変化点を拾う
AIは、数字を並べるだけでなく、月次試算表から変化点を読み取り、経営者との面談で確認すべき質問のたたき台を作ることもできます。
たとえば、売上の減少、外注費の増加、粗利率の悪化、現預金残高の減少、借入返済負担の増加などをもとに、次のような問いを整理できます。
- 売上減少は受注減少なのか、請求タイミングのズレなのか
- 外注費の増加は一時的な案件によるものか
- 粗利率が悪化した原因は何か
- 値引き販売や低粗利案件はなかったか
- 来月以降も同じ外注体制が続くのか
AIが出したコメントや質問は、そのまま顧客に出すものではありません。
大切なのは、AIの出力をもとに、税理士が顧問先との対話の質を高めることです。
4. これからの税理士に残る価値は「判断・対話・意思決定支援」
AIに置き換わるのは、税理士資格ではありません。
置き換わるのは、入力、転記、集計、仕訳候補、定型レポートの下書きといった「作業時間」です。
一方で、AIには難しい領域もあります。
- 顧客の不安を受け止めること
- 社長の性格や意思決定の癖を理解すること
- 会社の歴史や人間関係を踏まえること
- 税務・財務・経営を総合的に判断すること
- 社長が決断できるように背中を押すこと
これらは、税理士の先生方だからこそ担える重要な価値です。
つまり、これからの税理士は、
数字を作る人から、数字で経営を動かす人へ
進化していく必要があります。
AI活用の目的は、効率化で終わらせないこと
AIを導入すると、証憑処理や資料作成などの作業時間を短縮できます。
しかし、効率化だけで終わってしまうと、単なるコスト削減で終わります。
本当に重要なのは、AIで空いた時間を何に使うかです。
今回のセミナーでは、空いた時間を以下のような高付加価値業務へ振り向けることを提案しました。
- 月次財務面談
- 資金繰り予測
- 利益改善提案
- 銀行対応
- 価格改定支援
- 事業承継相談
- 経営会議支援
顧問先が本当に求めているのは、単なる入力作業ではなく、経営判断の助言です。
AIで作業時間を減らし、顧問先と向き合う時間を増やすことが、これからの会計事務所の差別化につながります。
明日から始められる3つの行動
講演の最後には、AI活用を難しく考えすぎず、まずは次の3つから始めることをお伝えしました。
1. 作業を棚卸しする
まず、事務所内の業務を洗い出し、次の3つに分けます。
- AIに任せる業務
- AIの下書きを人間が確認する業務
- 人間が判断する業務
この整理をすることで、AI導入の優先順位が見えやすくなります。
2. 月次業務からAI化する
最初からすべてをAI化する必要はありません。
証憑読取、仕訳候補、月次コメント、説明資料の下書きなど、毎月繰り返す業務から始めるのが現実的です。
3. 顧客面談の時間を増やす
AIで空いた時間は、顧問先と話す時間に変えることが大切です。
月次試算表を渡すだけで終わらせず、
「なぜ利益が減ったのか」
「どの商品・サービスが儲かっているのか」
「資金繰りは何カ月先まで安全か」
「値上げや採用、投資をどう判断するか」
といったテーマを話せる税理士が、これからのAI時代に選ばれていきます。
ご参加いただいた皆さまへ
今回ご参加いただいた岐阜県の税理士の先生方、ならびに開催にご尽力いただいた関係者の皆さまに、心より御礼申し上げます。
AIは、税理士の仕事を奪うためのものではありません。
むしろ、税理士の先生方が本来持っている専門性、顧客理解、経営支援力をより発揮するための道具です。
株式会社はちえん。では、今後も中小企業、士業、専門職の皆さまに向けて、生成AIを実務に活かすための研修・講演・導入支援を行ってまいります。
講師プロフィール
坂田 誠(さかた まこと)
株式会社はちえん。代表取締役。ITコンサルティング、SNS活用、生成AI活用をテーマに、中小企業・商工団体・業界団体向けの講演や研修を多数実施。
日経新聞にて「ネットに詳しい経営コンサルタント」、東京新聞にて「SNS戦略コンサルタント」として紹介。近年は、生成AIのビジネス活用、AI社員の制作・運用、士業・中小企業のAI導入支援を中心に活動しています。
生成AI・AI社員・士業向けAI活用研修のご相談
株式会社はちえん。では、税理士・行政書士・社労士などの士業の先生方、ならびに中小企業向けに、生成AI活用研修やAI社員導入支援を行っています。
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株式会社はちえん。は、AI時代における中小企業と専門職の進化を、実務レベルで支援してまいります。